歯を削る矯正？「IPR処置」とは

「矯正中に“歯を少し削ります”って言われたけど、大丈夫なの？」
そんな不安を感じたことはありませんか？
矯正といえば、ワイヤーやマウスピースで“歯を動かす”イメージが強いですよね。
でも実は、よりきれいな歯並びに整えるために「歯と歯の間をほんの少し削る」処置を行うことがあります。 それがIPR処置（アイピーアール処置）です。
IPRとは「Interproximal Reduction（隣接面削合）」の略で、特にマウスピース矯正（インビザラインやスマーティ）ではよく使われる処置です。

IPRの主な理由は、矯正治療で歯を並べるためのスペースを確保することです。 歯並びがガタガタな方は、歯を動かすスペースが足りないことが多いため、抜歯や顎の拡大などさまざまな方法でスペースを確保する必要がありますが、その中のひとつの治療法としてこのIPRで自然なすき間を作る場合もあります。
また、IPRによって歯の形を整えることで、

・矯正治療の仕上がりがよりきれいになる
・前歯のバランスが整う
・歯と歯の接触が自然になる

などの効果もあります。

「削る」と聞くと、痛みやしみる症状が出るのではないかというイメージを持つ方が多いですが、心配はいりません。
IPRは歯の表面（エナメル質）のごく一部だけを削り磨くので、痛みもほとんどありません。
また、 削るといっても、0.1〜0.3mm程度（コピー用紙1〜2枚分ほど）と削る量はごくわずかです。専用のやすりやストリップスという薄いやすり状の器具、あるいはダイヤモンドディスクなどを使用して、歯の側面をやさしく研磨し、すき間を作ります。麻酔をする必要もなく、数分程度で終わる処置です。
また、「削ることで虫歯になりやすくならないの？」という質問もよくありますが、虫歯の原因は食べ物による糖分のためそちらの対応を適切に行えば削ったからといってなる訳ではありません。
エナメル質という層だけをわずかに削るため、歯の防御機能を損なうことはありません。
さらに処置後は表面を滑らかに磨き直すため、汚れも付きにくくなります。そのため、普段通りに歯みがきをしっかりしていれば、虫歯リスクが上がることもありません。　

すべての矯正治療でIPRが必要になるわけではありません。 歯並びやお口の大きさ、治療計画によって行うかどうかが決まりますが、次のようなケースではIPRが効果的です。

矯正治療によって歯並びの改善は可能ですが、歯の大きさそのものを変えることはできません。そこで、IPRを行うことで上下や左右の歯のバランスを微調整して、見た目をより自然に整えることができます。特に前歯のバランスを整える際に効果的で、笑顔の印象がぐっと明るくなります。

歯が重なって生えている場合、歯を動かすためのスペースが足りないことがあります。
このようなときにIPRを行い、歯と歯の間にわずかなすき間を作ることで、自然な位置に動かしやすくします。
ただし、歯の前突（出っ歯）が強い場合や、重なりが非常に大きい場合には、 IPRだけでは十分なスペースを確保できず、抜歯が必要になるケースもあります。
歯の状態をしっかり確認したうえで、最適な方法を選ぶことが大切です。

「ブラックトライアングル」とは、歯と歯の間にできる小さな三角形のすき間のことです。
歯ぐきの下がりや歯周病などが原因でできることもありますが、矯正後の歯の形のバランスによって現れることもあります。
IPRで歯の接触面積を少し増やすように整えることで、すき間ができにくくなり、 ブラックトライアングルの予防や見た目の違和感を減らすことができます。

・抜歯をせずにスペースを確保する
・歯へのダメージが少ない
・治療期間の短縮につながることがある

・削る量や位置は、歯の状態に合わせて慎重に行う必要がある
・適切に行わないと、歯と歯の間に段差ができることがある

IPRは、歯を動かすために必要なスペースを作る大切な工程です。
削る量はわずかで、痛みもほとんどなく、安全に行える処置です。
“削る”という言葉だけ聞くと不安に感じるかもしれませんが、実際は歯の健康を損なうことなく、よりきれいな歯並びと自然な笑顔に近づくための工夫なのです。

当院では、3Dスキャンによるシミュレーション付きの無料矯正相談を行っています。 「自分の歯並びだとIPRが必要？」「抜歯せずにできる？」といった疑問にも丁寧にお答えします。
気になる方は、ぜひお気軽に無料相談へお越しください。