歯の神経を残せる、MTAセメントとは? 歯を守るための新しい治療材料

MTAセメントとは何か

MTAセメント(Mineral Trioxide Aggregate:ミネラルトリオキサイドアグリゲート)は、1990年代にアメリカで開発された歯科用の特殊な材料です。
歯の神経を保護したり、根の先端を封鎖したりする目的で使われるセメントで、「歯をできるだけ残すための救世主」と呼ばれることもあります。 従来の材料では難しかったケースでも歯を保存できる可能性が広がったため、近年注目度が非常に高まっています。

インプラントが受けられる施設

①高い生体親和性
MTAは体に害の少ない成分でできており、歯や骨、歯ぐきなどの周囲組織との相性が非常に良いのが特徴です。使用後は炎症を起こしにくく、治癒を促進します。

②強い封鎖性
歯の中は細菌が入り込むと再感染のリスクが高まりますが、MTAは隙間をしっかり封鎖する性質を持っています。これにより細菌の侵入を防ぎ、治療後の予後を安定させることができます。

③石灰化を促す力
MTAは硬化する過程でアルカリ性を示し、石灰化を誘導します。歯の神経に近い部分で使用すると、新しい硬い組織(修復象牙質)が形成されやすくなり、歯の自然な治癒力を引き出す効果が期待できます。

どのような治療で使われるのか

MTAセメントはさまざまな場面で活用されています。

1.覆髄(ふくずい)治療
虫歯が深く進行し、歯の神経(歯髄)が露出しかけている場合に、従来なら神経を取る必要がありました。しかしMTAを使用することで、神経を残しつつ歯を保存できる可能性が高まります。

2.根管治療
根の先端に穴が開いてしまった場合や、従来の薬では治りにくい炎症がある場合にMTAでしっかりと封鎖します。これにより再感染を防ぎ、神経を抜くことを回避できることがあります。

3.パーフォレーションの修復
治療中に誤って歯の根に穴があいてしまう「パーフォレーション」というトラブルが起こることがあります。MTAはその穴を塞ぐためにも使われ、歯を抜かずに保存できるチャンスを与えます。

4.外科的歯内療法
通常の根管治療で改善しない場合に、外科的に根の先端を切除し、その部位をMTAで封鎖する方法があります。成功率を高める材料としてMTAは欠かせません。

MTAのメリットとデメリット

メリット デメリット
  • 歯を残せる可能性が大きく広がる
  • 強い封鎖性で再感染を防ぐ
  • 神経を温存できるケースがある
  • 神経を残せるため、長期的な予後が良好
  • 保険適用外のケースが多く、自費診療になることがある
  • 従来の材料に比べてコストが高い
  • 材料の硬化に時間がかかり、術者の技術が求められる

治療を受けるときの注意点

MTAセメントを使用すれば必ず歯を残せるというわけではありません。
歯の状態や感染の程度によっては、神経を抜くことが避けられない場合もあります。
大切なのは「できるだけ歯を保存する選択肢の一つ」としてMTAがある、ということです。
また、医院によってはMTAを導入していないところもあるため、治療を希望する場合は事前に相談して確認すると安心です。

まとめ

MTAセメントは、これまでなら抜歯せざるを得なかった歯を残せる可能性を広げた最新の材料です。
特に「できるだけ自分の歯を残したい」と願う患者様にとって、大きな希望となる選択肢の一つです。
ただし、歯の状態によって適応は異なるため、まずは歯科医院で適切な診断を受けることが大切です。